生についての物語

それは、ただ冒険活劇である必要はない。

それは、ただ難病を抱えている必要はない。

それは、魂を殺すことで深みを出す必要のないものだ。

それは、現代の問題を抉ることで深みを出す必要のないものだ。

 

誰しもが持つ自分の物語の、ほんの一部。そのまた一瞬を切り取った短編集である。

一瞬を切り取ったが故にそれは超個人的な物語にもなっている。

しかし、超個人的であるがゆえに読者の想像を膨らませ、読者自身が勝手に自身と重ねようとする物語でもある。

 

読むものに困ったとき、彼の物語を読むといい。

深く染み入り、人生を変えることはないけれど、心のなかの細胞の一部に変わると思う。

書評などはひとまず置いておいて、静かなカフェでこの本と向き合う時間ももしかしたら必要なのかもしれない。